――暁の来ない世界で、彼らは何を掴むのか。
――暁の来ない世界で、少女達は愛し、憎み、殺し合う。
二つに分けられた世界。光の側に立つ人間と、闇の側に堕とされた魔族は、互いを憎み、殺し合う。その歪みはいつしか当たり前となり、世界の規律と化していた。分けられた二つは決して交わらず、ただ赤に染められてゆく。
人間を統べる光、勇者。その血族は、神の寵愛をその身に宿す者として、いつの世も世界を救う存在であり続けた。一方、死に魅入られた魔族の王――魔王もまた、神に選ばれ、世界が枯れ果てるまで生を喰らい続ける定めにあった。
魔王討伐へ旅立った勇者の娘として、何一つ不自由なく育てられた少女。太陽のように暖かく、聡明で、家族を誰よりも大切に想う。父の帰還とともに迎えた義妹リンネに惹かれ、また実の妹のように慈しむが、穏やかな日々は少しずつ崩れてゆく。成長とともに勇者の加護を継ぎ、その身に眩い光を宿してゆく。
「またあの時のように、皆んなで笑い合って過ごしたい。家族として――」
記憶を失い、勇者の養子として館へ迎え入れられた白髪紅眼の少女。口数は少なく、感情を表に出すことも稀だが、その内には人ならざる「何か」が禍々しく燃えている。空っぽの自分を満たしてくれるサラに強く心を惹かれ、彼女のようになりたいと願う。だが、二人の間には決して交わることのない、決定的な違いが横たわっていた。
「私は、私の命を闇に灯す。……それでも貴女は、私と共に生きてくれるでしょうか?」